どうも、山田店長(@yamada_tencho)です。
今日は、2021年9月13日に発表された、トップバリュの食料品「いまこそ!年内価格凍結宣言!」 について、ちょっと違った視点で見てみたいと思います。
この「いまこそ!年内価格凍結宣言!」は、昨今の食料品原料高による値上げの続く中、あえてPB商品の価格を据え置くという施策です。
油も小麦も高騰が続き、メーカーからも卸価格を値上げするというリリースもありました。
当然メーカーからの卸価格が上がると、それは店頭での商品の価格も上がるという事に直結します。
TVのニュース番組でもこの食料品の原価高騰について報道されており、消費者にも周知の事実となってきています。
そんな中、トップバリュの食料品「いまこそ!年内価格凍結宣言!」は
実質的には値下げなのでは?
と消費者に思わせる戦略があります。
このやり方、実にうまいんですよね。
何がうまいって、別に価格を下げた訳でもないのに、世間が値上げの風潮の中あえて値上げしませんって言うだけで、消費者からするとちょっと得するかのようなニュアンスがありませんか?
原料高の現状において、価格据え置きは実質的値下げと言っていいのかもしれませんが、実はここには一般消費者には見えないややグレーと思われるような現実もあるのでは?と妄想してしまいます。
以下では、トップバリュの食料品「いまこそ!年内価格凍結宣言!」について、ちょっと手放しでは喜べない理由を考察します。
なぜ原料高になっているのか?
そもそも論ですが、なぜ最近やたら値上げになっているのか?
主な理由は以下です。
②輸送費の高騰
③コロナ後の中国での消費拡大
④脱炭素の流れによるバイオ燃料の需要増
簡単に言うと、需要と供給の問題です。
世界の需要に対して供給が追い付いていない、というのが価格高騰の原因です。
世界的に異常気象は日本でも体感できるくらいに実感はあるかと思います。
輸送費の高騰については国内の陸路もそうですが、海外からの海上輸送費の高騰が大きく影響しています。
また、その輸送に使うコンテナ不足も一因となっています。
さらに、個人的には一番影響が大きいと思うのが、
中国の消費拡大です。
中国人は約14億人。
日本の10倍以上です。
業界では有名な話ですが、具体的で分かりやすい話があります。
珍味やおつまみのイカの足ありますよね?
日本におけるここ数年のイカの水揚げ量は大きく減っていて、店頭のイカの珍味商品の量目が減っていたり、イカゲソなんかは明らかに細くなっているんです。
ちょっと前までは、しっかり太く噛み応えのあるものだったのですが、昨今のイカゲソは本当に見るも無残な貧相な姿をしています。
これは、中国でイカの需要が高まって、中国によるイカの漁獲量が飛躍的に増えたためと言われています。
※詳しくは⇒謎の中国船はどこから? “消えた”イカを追って
このように、中国人の胃袋の嗜好が変わるだけで、隣国の我々の食にも影響しています。
正直イカゲソだけならまだ影響は小さいかもしれません。
ですが、当然それはイカだけに収まりません。
食肉・穀物にも影響が出ており、現在のような世界的食品原料高騰を招いている一因となっています。
なぜトップバリュは価格凍結が出来るのか?
そんな中、
という事です。
まずは、物の生産から店頭に並ぶまでの流れですが、以下の通りです。
通常だとざっくりこのような形となります。
例えば、食用油で言うと、日清オイリオグループ、J-オイルミルズ、昭和産業の大手3社は2021年11月1日納品分から、それぞれ家庭用で1キログラム当たり30円以上値上げすると発表しています。
この発表は、↑の流れで言うと、「メーカー⇒問屋」の間での値上げとなります。
「問屋⇒小売店」ではありません。
よく、食品の値上げがあると、小売店が「企業努力でなんとか店頭価格を抑えています」なんて言いますが、実はその限りではありません。
消費者は、「テレビでは値上がりって言ってるけど、このお店は値上げもせずに頑張ってくれてるんだなぁ」と思うかもしれません。
ですが、当然そこにはからくりがあります。
仮に製造コストが10円上がれば、普通に考えると店頭価格も10円以上絶対に上がるはずです。
その10円さえもトップバリュは上げない、と言ってる訳です。
では、
その10円は一体誰が飲み込むのか?
という問題です。
ここからは私の妄想です。
泣くのは誰か?
さて、製造コストが10円上がったら、消費者が手に取る店頭売価は物流コスト等を考えると10円以上上がらないと辻褄が合わないのですが、小売店側からするとそれを合わせる方法があります。
その方法は、
誰かに泣いてもらう
です。(ちなみに、これ意外にも店頭価格を抑える方法はあるのですが、長くなるのでそれはまた別で書きます)
単純です。
小売店側からすると、「店頭売価を上げたくないから、仕入れ原価を上げるな」と問屋に言う訳です。
当然直接的には言いませんよ。
よくあるのが、販売協力金やリベートと呼ばれるものです。
これは、単純に
ってやつです。
具体的に言うと、小売店側が100万円分仕入れて、問屋側がその5%をバックする事で実質95万円で仕入れが出来る、といった具合です。
このリベートを使って、帳面上の仕入れ原価は上がるけど、実質的な仕入れ原価を抑えるという事ができます。
こうして小売店側は店頭価格に仕入れ原価を転換せずに済みます。
ちなみに、これは「メーカー⇒問屋」の間でも同じ事が言えますし、小売店側も同様です。
と、ここまではよくある話なのですが、小売店側が損しないためのもうひとつ伝家の宝刀があります。
それは・・・
合い見積もり取る
です。
合い見積もりを取って原価維持or下落させる
世の中は競争社会です。
競争原理は至る所で働きます。
ひとつの商品を仕入れる際、仕入れ先はひとつではありません。
複数の問屋から仕入れることができます。
当然仕入れ原価も違います。
ただ、その問屋ごとで強みも違うので、どの問屋が良い悪いというのもありません。
で、市場が値上がり傾向になった際によくあるのが、商品の合い見積もりを取るという方法です。
これをすると仕入れ原価が下がったりします。
当然のことながら、これを問屋さんは嫌います。
だって、仕入れ先から
「原価を下げてくれないと他の問屋から買っちゃうよ?」
と言われているようなものだからです。
ただし、この合い見積もりは問屋としてもチャンスではあります。
この合い見積もりでうまく条件を提示できれば、大量の商品受注をもらえるチャンスだからです。
単品での原価を下げる事にはなるかもしれませんが、問屋としての売上を大きく伸ばす可能性もあります。
ただし、この合い見積もり競争に勝てない問屋も存在します。
販売店側に中小企業があるように、問屋にも大手・中小があります。
大手はその資本力で強気の条件を出してきますが、中小はそれができません。
なので、中小の問屋はどんどん先細りとなっています。
そんなこんなで、販売店側は複数の問屋から合い見積もりを取ることで、最終的に最も自分たちにプラスとなるような問屋さんと付き合う訳ですね。
その結果、店頭価格が下がったり、値上げ相場の時でも価格を維持したりする事ができるんです。
ただし例外もある
ここまで解説してきたように、大本の原料が高くなっても、店頭に並ぶ際にそのコストが乗らないパターンが多々あります。
が、それを頑なに許さなかったのが、某大手調味料メーカーでした。
これは誰もが知っている大手メーカーなのですが、このA社は店頭売価の引き上げをしていただけない場合は、今後様々な条件を提示できない旨を突き付けてきました。
相当強気です。
普通ありえません。
自分たちが作った商品は、小売店の店頭に並んで初めて売れます。
仮に、
なんて言われたらたまったもんじゃありません。
それなのに、そのA社は今後商品供給停止も辞さないと言ったスタンスでした。
仕入れのオファーに対して供給をしないという事は実際は出来ませんが、一切の条件を付与しないと言われました。
もし一切条件をいただけないとどうなるかと言うと、とてもじゃないけど今の店頭売価を維持することが困難になります。
しかも、そのA社の商品はどんな小さなスーパーにでも置いてあるような国民的商品です。
つまり、小売店としてはそのA社の商品を取り扱わざるを得ないんです。
通常の力関係だと、
なのですが、このA社の場合は、
という図式が成立します。
問屋に販売協力金を要請したり合い見積もりを取って、小売店側はなんとか店頭売価を抑えようとします。
ですが、一部例外としてA社のようなメーカーもあります。
しかも、このメーカーは
店頭売価も指定をしてきます。
指定売価を守っていただけないと今後条件を提示できない・・・と。
本来はメーカーが店頭売価を指定することはできません。
競争原理が働かなくなりますからね。
あくまでも売価を決めるのは小売店側の裁量にゆだねられるべきです。
それなのに・・・です。
中にはこういった例外もあるので、覚えておいて損はないですよ。
消費者は手放しで喜んでいいのか?
小売店、メーカー、問屋、それぞれがそれぞれの思惑で会社を運営しています。
そんな中でこうして原料高を理由に店頭売価が動くことがあります。
仮に店頭売価が現状維持となると、必ずどこかでその値上がり分が吸収されます。
それは、小売店なのか、メーカーなのか、それとも問屋なのか・・・。
いずれにせよ誰かが泣かなければ店頭価格が維持される事はありません。
果たして、トップバリュの食料品「いまこそ!年内価格凍結宣言!」は、誰かが泣いて価格維持をしているのでしょうか?
それとも・・・。
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